
大変にご無沙汰しておりました。前回はアマテラスがオオクニヌシに国譲りを迫り、タケミカヅチが遣わされたところまででしたので、今回はその続きをお話ししたいと思います。
タケミカヅチ(鹿島神宮などの祭神)はアメノトリフネと共にオオクニヌシの元まで来ると、おもむろに十拳剣(トツカノツルギ)を抜くと、波打ち際に剣先が上になるように突き刺し、なんとその上にあぐらをかいて座ったのです。
「中国雑技団かよ!」という突っ込みを入れるのを忘れるくらいにビックリしたオオクニヌシは、葦原中国をアマテラスの子孫に譲れと迫るタケミカヅチに対し、「私はもう国のことは任せているので、息子のコトシロヌシに聞いて欲しい」と答えました。
コトシロヌシは漁に出ていましたが、すぐにアメノトリフネに見つけ出されて連れてこられると、あっさりと国を譲ることを了解し、とっとと隠れてしまったため、オオクニヌシは「もう一人の息子、タケミナカタにも聞いて欲しい」と頼みました。
早速その場に現れたタケミナカタはタケミカヅチに対して、「国を譲ってほしいなら、力比べで決めようではないか!」と言ってタケミカヅチに力比べを挑みましたが、あっさりと投げ飛ばされてしまった為、これはかなわないと思い慌てて逃げ出しました。
逃げて、逃げて、逃げまくって・・・ 結局、信州の諏訪の湖まで逃げたところで捕まってしまいました。
タケミナカタはタケミカヅチに対して、「一生この地から出ないし、天の神の言うことを必ず聞くのでどうか命だけは助けてください。」と必死の命乞い。
そのかいあって何とか命は助けてもらい、その後諏訪の神としてこの地に祀られたのであります。
ちなみに、10月のことを神無月といいますが、これは全国の神々が出雲に集まり、神様がいなくなるためにこう呼ばれていると云われております。逆に神々が集まる出雲では神在月というそうですが、諏訪においても古事記の伝説より、タケミナカタが諏訪の地を一歩も出ないと約束したことから、出雲には行かないために神在月と呼ばれてております。
古事記に記されている諏訪の神に関するお話はこのようなものですが、不思議なことに「大国主命の国譲り」の重要な一節であるはずのこのお話は、「日本書紀」や「出雲風土記」など他のどの史料にも登場しません。それどころか、タケミナカタの名前すら・・・
さらに、惨めに敗走し、必死の命乞いをするなど世にも情けない負けっぷりをさらしたタケミナカタが、勝者であるタケミカヅチ、さらに日本書紀で国譲りに登場するフツヌシと共に、三大軍神として崇められているのはどうゆうことでしょうか?
そこには歴史を作ってきた勝者たちの思惑や、いろいろな氏族の複雑な関係が絡み合い、いわゆるこの国の成り立ちが神話という伝説の中に凝縮されたようなそんな興味深い背景があるように感じます。
そのようなお話になるのかならないのか?、次回こうご期待あれ!